ライカだとかコンタックスだとかみたいなレンジファインダーにはやはり沈胴レンズが似合うな、なんて考えがありまして。性能が落ちるんだろうな、とか耐久性も落ちるんだろうな、だとかそんな物言いにはたった一言Screw That!と返す所存であります。
随分前に購入したCanon 4sb改というキヤノンのレンジファインダーがありまして。やはりコイツに似合いのレンズを見繕わねばならぬ、という思いから、ふと立ち寄った銀座のレモン社のショーケースに鎮座ましましていたSerenar 50mm F1.9というキヤノンの老兵を、お買い上げと相成りました。
1949年発売開始、という代物ながら状態は大変良く、その鏡胴のシルバーの美しい事。クモリが発生していがちなキヤノンのLマウントレンズながらコンディションはとても宜しくあります。何よりこの4sb改との組み合わせの美しさときたら!しかも当時の純正非純正のフィルタがついておりました。これは嬉しい。
正面に燦然と輝くCanonとSerenarの名前。この後しばらくしてCanonはレンズを全てCanon — という名称に統一してしまったので、後期のキヤノンLレンズにはこんな名前は入っておらず、無味乾燥なスペックの羅列になってしまっております。辛うじて今日もニコンがニッコール銘を、オリンパスがズイコー銘を維持しておりますが、どうにもキヤノンがこのセレナーの名前を捨ててしまったのは勿体無いように思えてならないのでございます。
以前に買っておいた(というよりもCanon Serenar 35mm/F3.5にくっつくと思って買っていた)フードをつけた姿はこの通り。純正の組み合わせだからこそのこのマッチング感。ただただ美しいな、と思うのです。特にフードの黒塗装の美しさ。製造からどれだけたっているのかはわかりませんが、とにかく艶やかな黒。まったく素敵な代物だ、と感慨に浸るに十分な艶。嗚呼素晴しきかな。
早速試写に持ち出してみたのがコチラ。開放F1.9、手持ちで。この柔らかな描写。なんともオールドファッションなテイスト。ただ鳥居のペンキの感じや提がっているロープの質感なんかはキッチリ写っていて、レンズの素性自体は良さそうな感じが見える。そしてボケ味の怪しい事!所謂グルグルボケがかなり強く出て背景のボケはかなり酷く崩れる特性があるので、一種異様な迫力のある写真を吐き出して来る事があります。なかなかの周辺光量落ちに異常に渋い発色が組み合わされて、昔の時代劇の夜のシーンのような感すら有り。
F5.6程度まで絞ってみたのがこちら。途端にカッチリするものの、手前の看板背景の店の宣伝パネル共に赤の色の発色のとんでもない渋さは健在。この辺りまで絞ると背景のグルグルも光源の崩れもナリを潜め、優等生感の出る写りに。周辺の光量落ちもほぼ解消されているような。とはいえカッチリした写真が欲しいなら最初からカッチリしたレンズ、ぶっちゃけIndustar-61みたいなレンズでも良いけど、を使っておけば良いのでは?という考えも頭に浮んで、写真ってのは面白いなぁ、なんて思うのです。
じゃあ、今日はここまで。