先日模型でも知り合いのある方よりZeiss Ikonが誇る名機、Contax IIを譲って頂きまして。戦前の製造とは思えない程凄まじく美しい固体です。で、ご厚意から5cmのニッコールレンズも一本譲って頂いたのですが、やはりContaxもレンジファインダーである以上どうしても広角レンズが欲しくなるわけで。ところがContax用レンズはZeissという伝説に彩られたブランドである以上、どれもこれも値段が高く、成程これは中々辛い、などと思いつつ、ここは一つ人民の、労働者の英知に縋り、ソビエトが誇る銘レンズJupiter 12でも輸入しようかなとebayをプラプラしておりました。ところがそんな時にこそ思いがけない出物というのはある物で、うっかりBiometar 35mm F2.8という、どちらかといえばドマイナー寄りのレンズを一本入手してしまったのでございます。
戦後東西に分割されたCarl Zeiss社の昔からある方、時代の荒波に最も翻弄されて行く方、即ち東側のツァイスが、未だレンズの供給に難を抱える西側のZeiss Optonに対して供給したレンズ、と書けば、来歴の不思議さが知れるという物。何でも総生産数は2000未満だとか。東西冷戦が激化する前の、極々短い期間に、言わばつなぎとして生産されたレンズ。なんの因果か極東の島国にやって来てしまったのです。
シグマのsd Quattroを購入してからというもの、正直めっきりフィルムを持ち出す機会は減っておりました。が、このBiometar、家で現像したフィルムを眺めている時に、何か違うぞ、そんな気がしたのです。そしてスキャンしてみてビックリ。これが半世紀も前のレンズかと。なんでもない陸橋の下に射していたムーディーな光を撮った一枚をご覧して頂きたい。このシャープさ、この階調。何よりこれだけコントラストがキツい中で右側の陰が完全に潰れていないのがまたテイスティ。
山手線の高架を一枚。やっぱり解像度に目を見張る。この解像度に心を奪われる。やはり暗部の階調が豊富なのがとても美しい。ちなみにフィルター径としては40.5mm、ただしレンズが随分奥にあるので、普通のフィルタを装着した場合若干四隅がケラれ気味になる事をご報告しておきます。
- 現像:Rodinal 1:25、6.5分
- フィルム:Neopan 100Across。
- ボディ: Zeiss Ikon Contax II
- レンズ: Carl Zeiss Jena Biometar 35mm F2.8 (+赤フィルタ)
じゃあ、今日はここまで。