いつぞやのメット話に続きまたも備忘録。模型を作れる環境に無いから理論をコネているような状況。古代ギリシャ人が哲学を産んだ状況に近い、とか言ったらプラトンとかアリストテレスにしばき倒されそうね。
そんなわけで唐突に肌色考察を開始したい。とてもしたい。何故ならフィギュアペインターの個性が最も強く出るのは肌色だろう、と思うから。勿論最初は色々と上手い人のレシピを参考にして始めるとは思うんだけれども、ある時点を境にやっぱりそれぞれの色っていうのが作られていると思うんだよね。勿論根拠なんてのは全くないので、科学的考察ではまったくない。反論異論、御座いましたらコメント欄へ御気軽にどうぞ。
さてフィギュアペインターが作る「肌色」というのは、ざっくりした系統として大体2種類+その他の3種類に分けられるのでは無いか、と考えてみる。それも、特にベースとシャドウの色の落とし方に注目した時に。当然黒人を塗る時にはこの分類からはゴッソリ外れるだろうし、SF系のフィギュアを塗るなら緑の肌だってあるだろう。というわけで「白人」を塗る時、と限定して話を進めたい。
- 赤系 (いわゆる旧ユーロミリテール系、油絵の具使用者に多いような雰囲気。廃れ気味か?)
- 橙系 (平野義高氏系、恐らく現在のユーロミリテールの主流)
- その他独立系 (ロシア/北欧系モデラーに多い気がする)
赤系でパっと頭に受かぶのは松岡氏かな?いや、でも氏の塗りはまた違うような気もするけども。これは鮮やかな赤系の色をシャドウに落とすタイプ。一時期ユーロ塗り、と言われた顔全体を紅い色調で纏める作風からのシフトの結果じゃないかなぁ。確かに白人の肌が紅潮した時の赤、というのは我々黄色人種の常識である”赤みが指す”というレベルではなく、正にピンク色というべき物か、スラヴ系/北欧系の肌の白い人間なら朱とでも言った方が近い色になる。なりはするけども一時の流行りであった全体を赤く落とす、という作風はやはり非リアル(unrealistic)だと判断された結果、ハイライトの赤系へのシフトを止めて赤系のシャドウが残っているんじゃないかと愚考。何となくこの系統は油絵の具の使用者に多いような偏見を持っている。多分油絵の具の色の透過性があるおかげで赤を鮮やかにグラデーションできるからじゃないかしら。逆にエナメル系統であるハンブロールの赤は不透明性が全体に高く(ハンブロール全体の特徴ではあるけども)、加えてハンブロールの赤系統色はあまり純粋な赤に近い色が無い。どれも若干濁った感じの赤(73:マットワイン/113:マットラスト/160:マットジャーマンカモフラージュレッドブラウン)か、あるいは強すぎる赤(19:グロスブライトレッド/20:グロスクリムゾン/60:マットスカーレット153:マットインシグニアレッド)かの二系統しかなく、緩やかな赤を表現するのは苦手。多分その当りの特性の近いからハンブロールで赤系統でガッツリやる人が少ないのじゃないかしら。
対して橙系は平野氏が筆頭かなぁ。肌色/フレッシュと呼ばれる橙系の色で仕上げるのは。勿論その中でもそれぞれの好みに合わせて細かく差があって、橙と括ってもサーモンピンクに近いようなオレンジから本当に”肌色”のレベルまで色々あるのは間違いない。手前をおこがましくも何処かに分類するならココか。何時ぞやのMilitaly modellingのユーロミリテール特集号を見る限りでは現在のユーロの主流はコッチにシフトしているような印象を受けた。こちらは赤系統と違いアクリル/エナメル系統で仕上げてる人が多い印象。これはもう単純に塗料のバリエーションと特性による物の違いではないかな、と思う。例えばファレホ/アンレア系のアクリルであれば所謂”フレッシュ”というオレンジ系統の色を中心に最初からシャドウ/ハイライトがラインナップに存在する為、そこをとっかかりにするとこのオレンジ系になるのではないかな、と。又ハンブロールも黄色~肌色系として使用出来る色が非常に多い為、こっちの系統に流れている人が多い気が。日本で教育を受けた人なら無意識下に叩き込まれているであろう小学校の絵の具に入っているような”肌色”という意識のままで塗装のルーチンを構築できるから、特に日本で最近フィギュアペインティングを始めた人にとって取っ付きやすい、ってのもあるかもしれない。人の肌を塗る為の色として刷り込まれている色を使う事による安心感、とでも言うのかな。だって肌色って何色?って聞かれたらあのオレンジ系統の色思い浮かべるでしょう?間違っても赤系統の物じゃない。fgでざっくり「ミリタリーフィギュア」タグを検索するとこっちの系統が極端に多いのはやっぱりその辺りの影響もあるんじゃないかと愚考。
そして独立系ってのはもう本当にその他、と括るしか。特にロシア系/北欧系モデラーなんかは影に黒を落とす事が多いような印象を受ける。それも暗い赤、とかじゃなくてもう本当に黒。それはCalvin Tanがやるような黒立ち上げ、というレベルじゃなくて、本当に生の黒をガスっと落とす感じ。ロシア/北欧の鈍い太陽光と、その下で生活する人々の彫りの深い顔という二要素が合わさって、黒を自然に見せているのかもしれない。勿論単純にフィギュアに力を入れていないが為の手抜きという可能性は全く否定できないんだけども。実際人種、というか住んでいる場所による色の見え方の違い/物事の色に対するステレオタイプってのは、あまり言われないけども間違いなく存在すると思うんだよね。例えばそれはラテン系モデラーが時に見せる、異常な迄に暖色にシフトしていながら尚ちゃんと色の差異が存在する色調であったりとか、東欧系のモデラーの土色を赤っぽい系統の色として捉えている事であったりとか。
そんな事を考えながら他人のモデラーの作品を眺めてると面白いんじゃないかな、とふと思っただけでございます。
じゃあ、今日はここまで。
PS:ギリシャのPeriscopio Publishing発行の本を一冊イギリスのオンライン書店に注文してみた。届いたらまたレビュー載せます。