諸々あってドイツに出張なのですが、諸々あってコペンハーゲン経由でして。先日のイスタンブール経由イスラエル行きに続き、正に世界を股にかけ、飛び立つ私プライスレス。社会人になってより手前海外営業としてクンフーを積んできておりますが、最近特に思うのは女子大生あたりが目を煌めかせながらのたまう「グローバルな活躍」の実態とは、即ち世界を股にかけた馬車馬になることなのではないかと思うのです。時差は体を苛み、習慣の違い文化の違い言葉の違いは精神を(意識せるとせざるとを問わず)痛めつける。僅かな出張手当を楽しみにしつつエコノミークラスの固く薄く狭いシートを揺りかごとし、目の前の小さなモニタに映る映画のみを慰めとし。長駆赴いた客先では地味な折衝に明け暮れ、ホテルに戻れば泥のようにベッドに沈む。美しきかな我等海外営業。
しかして私が海外営業として一つ魂の慰めとするのは、色々な街を見られることでございまして。雨に濡れるバンベルクの街の石畳、朝焼けのイスタンブールに霞んで見えるモスクの威容。ベエルシェヴァの町でコーヒーを楽しむイスラエル防衛軍人達やブルゴスの大聖堂前に佇む老婆。手前は比較的人嫌いのうちに分類される質の人間ではありますが、しかしとにかく街という物が好きなのです。
で、丁度コペンハーゲン上空辺りで先頃話題をかっさらった映画「君の名は」を見まして。エストニア上空で食べた吉野家やモスに続き、連なところで変な経験をするシリーズにまた1ページが追加されました。話自体大変面白く、特に時間に関連するSFや作品が好きな手前はうぉう円盤購入か、などと思っているのですが、その中に描かれた街についてちょっと備忘録として書いておきたいなと。
作中糸守と東京という2つの街が舞台となるわけですが、手前は東京の描写に堪らなく愛着を覚えたのです。手前の育った街東京とは、なんと美しい街でしょう。恐ろしく効率化された公共交通機関と、ともすればRoboticに見える程に画一的且つ深刻な顔をしたサラリーマン達の行進。とても世界一のメトロポリスの中核と思えない程に乱雑な都市計画と、女性もかくやと羨むほどに激しい凹凸。数分間隔で鉄道が往復する鉄路に潜む、まるで生産設備の搬送工程を見ているかのような、未来的な、余りに未来的で人間味の無いようにすら感じる美しさ。「君の名は」に見える東京は、正にその空気を描いてくれているように思うのです。
ああ美しきかな東京。あの複雑な色彩と、一種異様な程に調和に満ちた街。他の都市にあるような無法さを、こと中心部に関してはほぼ根絶しきってしまった、実態あるハリボテ。おお、我が東京。東京!そんな東京の美しさを、ふと雨に濡れるハンブルクの真ん中で、噛み締めてみたりするのです。
じゃあ、今日はここまで。