さて今回はオスプレイのMen-At-Armsより、第414巻"The Russo-Japanese War 1904-05"をご紹介。普段紹介している第二次世界大戦物と比べた時に、どうにもこの一冊、妙に力が入っているように思えます。著者はA.Ivanov氏とP.Jowett氏、そして驚いた事にイラストは、マスターボックスやミニアートの箱絵を担当しているAndrei Karachtchouk氏。
The Russo-Japanese War was a power struggle between the two dominant nations in north-east Asia.(本書P.3)
≒「日露戦争は北東アジアにおける二つの覇権国家の間に起きた闘争である」という書き出しで始まる本書。構成はオスプレイスタンダードで、政治的背景と開戦理由を説明する序章に始まり、ざっくりとした時系列の説明あり、機関銃や通信手段、観測気球と両軍どちらの側にもいた中国人達に焦点を当てた軍事的イノベーションについての説明あり、当時の日露両軍の状況や、制服についての説明ありと盛り沢山。掲載されている写真が二次大戦期の物と比べて非常に高品質な物が多いように見えるのは、まだ写真機が貴重品だった時代を反映しているのかな、などと思ったり。お陰で表情や軍服の質感まで見えるような写りの良い写真が多いのは有り難い。
とにかく素晴しいのはAndrei Karachtchouok氏の手によるイラスト。1ページ丸々使ったカラーイラストが8ページで、ロシア兵が19例、日本側が12例。ただでさえ資料の少ないロシア側、それも日露戦役の頃のロシア帝国の物を、A.Karachtchouk氏の手による美麗なイラストで見られるのはこれだけでも買う意義あり。イラストの顔つきは恐しい程にスラヴ/日本人の形をしており、しかもそれがステレオタイプを強調しすぎた嫌味なレベルに至るギリギリ手前で留められているのは本当に溜息が出そうになる。光の反射まで計算に入れられた色も、フィギュアペイントの手本としてそのまま使えそうなぐらいの代物。いや、本当に素晴しい軍装的に見ても、第一次世界大戦以前の、迷彩服というアイディアが広まる僅かに手前、華麗で華美な軍服が戦場に跋扈した時代の残照とでも言うべきスタイルを持った軍服、特にロシア帝国側の服装は本当に興味深い。クバンコサック、シベリアコサック、トランスバイカルコサック、そしてアムールコサックと、コサック兵のイラストが4例載っているのも嬉しい限り。
全体として、Men-At-Armsの中でも屈指の本になっているんじゃないかと思っております。高品質な写真、規模の上では第一次世界大戦や第二次世界大戦と比べると比較的小規模であった日露戦争を、サッパリと纏めた解説、そして何よりも美麗極まるイラスト。どれを取っても素晴しく御座います。良いから買え、イラスト目当てでも良いから買え、そう言いたくなるだけの本で御座います。是非に。
★★★★★(5)
じゃあ、今日はここまで。