はてさてGSIクレオスよりアクリジョンなる水性塗料が発売されまして、いよいよ持って日本の模型世界においてもアクリル系への大きなシフトが発生するのかな、などという淡い期待を持ちつつも、しかし人々はラッカー系の技術の大多数が使えなくなる事に気がついているのかな、なんて事を考えながら、我が一族の例に漏れず新しい物好きの手前としては居ても立ってもいられず、その噂のアクリジョンなる物を買って来たわけであります。以下テスト。全ては手前cutnipperの個人的なインプレッションであり、万人が同じように感ずるわけではない事は最初にお断りしておきます。
今回テストベッドになって貰ったのは古色蒼然たるアンドレアミニチュア製54mm降下猟兵。確か中学か高校時代、塗装をハンブロールに全シフトした時代に、未だあの懐しき世界のラジオ会館の7階にあったイエローサブマリンの投げ売りコーナーにあった物を、学生らしく金欠に喘いでいた手前が買って来た物でありますから、もう7年から8年は前に購入した物であり、原型自体はそれよりも遥かに前に発売されている物ですから、相当前の代物になります。塗料が所々残っているのは、高校時代に手前がハンブロールの青色の塗装ベースとしてテストしてみた所気に入らず、ツールクリーナーにドボンしたにも関わらず剥がれなかったハンブロールの残滓であります。讃えよハンブロールの強靭なる塗膜。
まずはザックリと下塗り一回目。ノープライマーでホワイトメタルに直塗り、希釈は水道水という条件でございます。アクリジョンは塗料の新ラインナップなのでまだまだ色が全然揃っておらず、この色も光沢色の5番「ブルー(青)」と半光沢色22番「ニュートラルグレー」の混色で作製。ごらんの通りかなりキツめのグロスになっております。感覚的には攪拌不良のラッカー塗料の持つ嫌な感じの艶に近く、ファレホやシタデルカラーの、どこか粉っぽいような塗り感と違って、より樹脂っぽい感じと良いますか、ビニールのような艶になっております。なんというか、メディウムを大量に叩き込んだ時のファレホ的と言うか、実は一番近い感覚はマスキングゾルじゃないかなぁコレ。下塗り一回でこれだけ隠れている隠蔽力に注目。
ハイライト、シャドウを入れ終わった状態。シャドウは前述の5+22の組み合わせにつや消し色の12番「つや消しブラック」を混色して塗装。こちらも艶消しを名乗ってはいる物の、5番と22番が両方とも艶有り/半艶の塗料である為、打ち消されて綺麗に艶が出ておりました。こうして見るとアクリジョンの艶消し粒子、というか艶消し成分はあまり強くないのじゃないかなぁ、という気がして参ります。ハイライトは5+22のうち22番の比率を若干多くした物に、11番「つや消しホワイト」を混ぜて塗装。やはりこちらも艶が出ております。結構艶がキツいので、塗装面の状況確認がし辛いのは欠点と言えば欠点か。ハンブロールのように長い乾燥時間があるわけでもないので、塗った側からビニール臭いグロス表面になって行く感覚は、個人的な意見としてはあまり好きではないなぁ。
ファレホのマットヴァーニッシュを吹いて艶消しに。手袋は素材が良くわからなかったので、恐らくぶ厚い皮であると仮定。比較実験として普段ファレホだろうがハンブロールだろうが使っている皮色の塗装方であるブラウン地に黒のウォッシング(つや消し色47番「レッドブラウン」→12番)を試した物の、結果はイマイチ感漂う物に。普段はもうちょい、黒と茶色の曖昧さというか、黒が擦れて茶色くなった感じになるのだけれど、アクリジョンに関しては上掛けの黒が強く出すぎてる感じ。これはなかなか扱いが難しい塗料だなぁ。少なくとも薄め方に関して言えば、ファレホ/ハンブロールよりも遥かにシビア。下地を透かす、という作業が本当に難しい感じがある。隠蔽力が以上に高いんだな。薄めても。ところが薄めすぎると一点して色が殆んど付かなくなってしまうような印象。これはキビしい。
顔をある程度塗ってみた状態。色は11、47、艶有り14番「オレンジ(橙)」3番「レッド(赤)」19番「ピンク(桃)」、半光沢の24番「オレンジイエロー(黄橙色)」を適当に混ぜて。前述の通り薄め方が非常にシビアな所があるので、とにかくグラデーションをかけるのが難しい。ファレホやハンブロールの比較的アバウトな薄め方では太刀打ち出来ない所があなぁ。乾燥に関してもファレホよりも早いので、細かい所を塗る時に逡巡するとその間に筆が乾いてしまう感じ。いやぁ、これは難しい。難しいよ。
そんなわけで発売されたばかりのアクリジョンを使って、フィギュア塗装をしてみた次第でございます。どうせカーモデルやらエアやらAFVやらには誰かがやるだろうから、自分は外角高めにボール二つ分ぐらい外れた所狙いでこんなテストをしてみました。以下感じた事を箇条書き。
- 素材表面への食い付きは非常に良い。ホワイトメタル直塗りで剥れないので、恐らく離型材さえ落ちていればレジン直塗りでも問題は無いのではないか。
- 隠蔽力は非常に高い。ホワイトメタル直塗りの場合でも2回か3回塗れば間違いなく下地を隠す事が出来る。
- 塗膜の艶が強い。ただし上品な艶というよりもビニールめいた安い艶。
- 塗膜の強度は非常に高い。塗装中に誤って床に2回程落としたが塗膜ハゲは0。
- 発色は非常に鮮やか。ファレホを使った人なら感じるであろう乾燥後の色変化も少ない。
- 薄め方が非常にシビア。瓶生ではシャバシャバすぎる癖に色が強い。それでは、と薄めると、ある線を越えた瞬間全く色が乗らなくなる(極端に乗り辛くなる)印象。ボーダーの見極めがスッゲェ難しい。
- 匂いはあるがそれ程強くない。
- 乾燥が物凄く早い。アクリジョン>シタデル>ファレホぐらいのイメージ。それのおかげでグラデーションがやり辛く、又筆に少量含ませて細部塗装、とかはまだし辛い。リターダーに期待。
ザックリ手前の受けた印象を表すなら、「塗るのには向いているけれど描くのには向いていない塗料」と言ってしまえるかもしれません。まぁ、また色が増えてきたり、リターダーやら何やらが増えてきたら色々試してみたいな。
じゃあ、今日はここまで。