さて、随分前に注文した事を書いたギリシャはペリスコピオパブリケーション発行の”Advanced Figure Modeling”が、英Aviation Book Centreより届いたので早速レビュー。1月の中盤に注文し、今日まで届かなかったので一昨日Aviation Book Centreに問い合わせのメールを送信。"1月22日に送ったよ"という返事を頂戴したのが今朝で、今日の昼到着というちょっとしたジョークのような状況でした。
この本、英Military Modelling誌の巻末にあった新製品紹介でその存在を知り興味を引かれ、さてAmazonで買うかと思ったらISBNを打ち込んでも出ない。しばらく入手を諦めていた物の、そういえばMM誌の巻頭にいつも軍事関係を扱う本屋の広告が載っていたな、と思い出し、Aviation Book Centreで注文した、という経緯を辿り、冒頭に至るというわけでございます。
オスプレイより一回り大きな本で全編カラーのこの本、表紙には"Strongly Recommended by PEGASO MODELS"(≒ペガソモデルズ一押し)なんて文字が踊っていてる。
内容としては35種類の作例、5つのステップバイステップ、そして時代事にセクション分けされた、各陣営のフルカラーイラストが26種類で全178ページ。ギリシャの出版社による発行ながら内容は全て英語なので、その点においての心配は一つもなし。
ステップバイステップの内訳は、Ray Farrugia氏が「アクリル塗料による顔の塗装」と「ペガソモデル社製 75mm プラエトリアニ(近衛隊)の百人隊長」の2つ。Markus Eckmann氏造形/Juergen Nirschl氏塗装の”THE LOST DOCUMENTS”というヴィネットを例としての「商業用(for comercial casting) 75mmフィギュアの作り方」。Christos Panayotou氏が「アンドレア社製 90mm フランス胸甲騎兵 1812年-1815年」で、最後にJaume Ortiz Forns氏がアレキサンダーミニチュア製の1/35フィギュアである"武装親衛隊装甲擲弾兵 1945年"を使っての「イタリア迷彩の塗装方」とバラエティ豊か。残念なのは「アクリル塗料による顔の塗装」ハウツーの色が今一おかしい所。全体的に色調が青みがかってしまっていて、肌色っぽく写っていない。別アングルの写真なんかを見るとちゃんと肌色になっているので、明らかに写真側のミス。尤も、4つめの「アンドレア社製 90mm フランス胸甲騎兵 1812年-1815年」も専ら写真を費しているのは顔の塗装方なので、そちらで補完されていると考えればまあ大丈夫か。他のハウツーも写真自体がイマイチな物が多くで、とにかく文章を読んで脳内で補完していくのがメインになりそう。
イラスト26例は20例が紀元前490年前後のギリシャ都市国家郡及びペルシア帝国配下の国家郡の軍装、残りの6例がフン族関係という分け方で、ローマ帝国やそれ以降の中世近代系のイラストを目当てに買うと恐らくガッカリする羽目に。それぞれのイラストには詳細な解説文章が付属。この26例は本当にバラエティに富んだ服装を選んでいて、とにかくヒストリカルフィギュアとしては見栄えがするんだろうな、という事が容易に想像出来て楽しい。古代ギリシャの軍装というと映画300に描かれたスパルタ人達のように真鍮色の鎧に赤いマントと頭の飾りというのがのステレオタイプなスタイルだけども、このイラスト例を見ている限りはもっとカラフルでバリエーションも豊かだったらしく興味が持てたのは儲け物か。それに、このチョイスは古代ギリシャ系に妙に幅広いラインナップを持つペガソモデルズとの関係のせいなのかな、とか邪推するのもまた楽しい。
作例はどれもかなりハイクオリティ。どれも何某かの賞を取った物との事。古代ギリシャから第二次世界大戦のドイツ兵まで手広くカバーしていながら、どれも感嘆できるレベルの物で揃えてるのはお見事。それぞれの作品についての解説はしないけども、どれも膨大かつ詳細な解説が必ずセットになっている為に読み応え抜群。何が嬉しいってそれぞれの作品に使った色が必ず書いてある所。それもただ何色、という書き方ではなく、ハイライトを作るのに使った色はコレ+コレ、ベースはソレ+ソレ、シャドウはこう、みたいなモデラー視点で書かれているあたりは判ってるねぇ、と思わざるをえない。ページをめくる度に見つかる発見、というと言い過ぎかもしれないけども、あまりに超絶な作例に丁寧な解説がついている為、何となく出来そうな感覚を覚えてしまうのはやはり編集の妙なんだろうなぁ。
総じてクオリティの高い本。読んだだけで満足するタイプの人にはステップバイステップのクオリティが若干落ちる為にさして面白い本にはならないだろうけど、実際に手を動かしてみる人にとっては本当に役立つ本になっていると思う。写真のクオリティも作例の部分に限っていえば文句無し。それを支えるテキストもモデラー視点で、そこに技術を共有する事を渋っている雰囲気は全くない。トライアンドエラーを繰り返す上で、その時手元にあれば回答に辿り付くのが早くなる、そんな本のような印象を受けました。オスプレイのModelling Scale Figuresに掲載されているような基礎を理解した人達が、その先にある自分の技能との戦いの時に必要とするタイプの本じゃないかな。初心者がこれを見せられても何の助けにもならないような。
ハウツー部分の残念さで
★★★★☆(4)
じゃあ、今日はここまで。
PS:
以前のオスプレイの本にも載っていて、この本にも載っているタータンチェックの塗装方。西洋のヒストリカルモデラーにとってはやはり鬼門扱いなのかしら。