手前は大学でウクライナ言語/文学を副専攻にしておりまして、その関係でウクライナに一月滞在していたりも致しました。また、住んでいた街が北米最大のウクライナ人コミュニティが存在する場所であった為、友人達にはウクライナ系が山程おりますし、ウクライナの文化や風習、食生活という物は、実に身近な物でした。であるからこそ、手前はそれなりにウクライナという国に親しみを感じております。そのウクライナがしっちゃかめっちゃかになっている、というのはニュースでも報道されているので広く知られている事で御座います。
手前が一月住んでいた都市であるリヴィウを含むリヴィウ州がウクライナからの独立を宣言した、なんてニュースも伝えられておりまして(真偽は不明)、いよいよどうしようもなくなってきた感があります。リヴィウは美しい街でした。住んでいる人達が誇らしげにしている街でした。クィーウ(キエフ)は大きな街でした。スラヴ世界発祥の地としての自負が見える街でした。とにかく悲しい物です。手前の友人夫妻がクィーウ(キエフ)で無事である事が確認できているだけけまだマシと言えるのですが。
最早どこにも収拾がつかなくなってきている雰囲気があります。或いは本当にリヴィウが独立を宣言しているとしたら、中央との武力衝突も避けられないのではないでしょうか。あの美しいリヴィウの街で。そうなれば私が見たあの美しいリヴィウは、素朴で泥臭くて、優しい人々の住んでいるリヴィウは、しばらく見られた物ではなくなるでしょう。
ウクライナは貧乏な国です。別に治安が飛切り良いわでもない。ソビエトの名残でサービスは悪いし、賄賂が無ければ動かない事が沢山ある。逆に金を掴ませればなんとかなったりもする。だからあの国が最高だとは申しません。楽園だとは申しません。ですが、あの優しい美しい国がどつぼに嵌っていくのをこうして眺めているのは、酷く悲しい物だなぁ、と思うのです。
この先どうなるか全く予想がつきません。もしかしたら統一ウクライナという、ウクライナ人の悲願であった国家は地図から消えるかもしれない。西ウクライナにルーツを持つ友人達がよく私に冗談めかして言ったように、東西でわかれて二つのウクライナになってしまうかもしれない。まだまだ状況は悪くなるように思います。それでもきっと、あの青と黄色の鮮やかな旗が翻る限り、ウクライナ人達は唄うのでしょう。「ウクライナは未だ死なず、その自由も栄光も (Ще не вмерла Україна, ні слава, ні воля)」と。