[キットレビュー]Master Box 3563 “Counterattack”

メリークリスマス。山岳地帯標準時12月25日の夜にこの記事を書いております。もう更新が滞っているとかそういうレベルではなく、寧ろ季毎更新の香りすら漂ってくるこのブログ。饐えた匂いとかしてきそうね。まぁ更新してない間にノロウイルスにやられたりもしていたわけで御座いますが。さて、今回はマスターボックスのソビエト物キットをレビュー。かつてソビエト連邦の一構成国として大祖国戦争を戦ったウクライナのマスターボックスからのこのキット、実に悪くない。

MASTER BOX "3563 Counterattack" -1

箱絵と裏の組立説明書。例によって箱絵はA.Karaschuk氏の手による物。金色の小麦畑と思しき背景が実に美しい。ただ、この箱絵が東欧のパン籠と形容される事もあり肥沃な大地を持つウクライナの模型メーカーであるマスターボックスが、自社の製品に与えた物だと考えると別の意味を生じるような気が。相変わらず光の加減が本当に美しく、全体的に黄色い色調の中所々に見えるソヴィエト軍服の各所に使われている赤色が目を引いて素敵。サブタイトルは”Soviet Infantry, Sumer 1941”。
裏面の組み立て図は、相変わらずしょっぱい塗り。なんだろうなぁ、MB社の気にしてない雰囲気。かといってかつてのトライスターが如く、裏に平野氏の塗装見本とか載せられても凹む以外できないけどね。

MASTER BOX "3563 Counterattack" -2

ヘッド群。A.Gagarin氏の癖が強く出た顔つきは好みが別れるとは思う。思うんだけども、この出来は凄いよ。とくに上段右と下段左は素晴しいね。上段右の目元のスラヴ人っぷりとヒゲのディティールの素敵さ。下段左は何というか、Gagarin氏の癖が出てないないヘッドという意味で貴重かもしれない。1/35のフィギュアヘッドとしてはお手本のような顔付きだよね。6体のフィギュアセットにヘッドが9つというのも実に嬉しい。とはいえ、Gagarin氏の癖として首は相変わらず無いので、これが気になる人は何がしか手を打つべきだと思うなぁ。

MASTER BOX "3563 Counterattack" -3

胴体群。悪くない。下段右の胴体は、今までのMBであれば間違いなく潰れていたであろうポッケの縫い付けの線モールドがちゃんと入っている。これを見るにMBも少しづつクオリティは向上させている模様。とはいえ、あとちょっと、あともう壁一つだけ越えて欲しい雰囲気。襟の階級章のモールドがちょっと潰れてるのが残念かなぁ。上段左端、斜めのベルトをかけていない物の右胸には、割とキッチリした勲章のモールド有。

MASTER BOX "3563 Counterattack" -4

腕。面倒なので4本だけ。皺の雰囲気は浅いながら割と綺麗に入ってる。指が若干細めで長く、手首から先のサイズが全体的に小さいのは間違いなくGagarin氏の癖かと。全体的にТанкの原型師の人がつける皺と似た雰囲気だと思うんだなぁ。下段右のリヴォルヴァーは一体成形で、まぁモールド的にヌルいとはいえそこまで悪くはないし、ドラゴン的に別にされてもフィッティングに困る事になるのでこれはこれで良いような。とはいえ、やっぱりもう少しクリスピーなモールドで欲しい所。

MASTER BOX "3563 Counterattack" -5

足と、MBらしくなく分割された上着のベルトより下の裾。例によって面倒なので足3本。皺のリズムは非常に軽快で、実に雰囲気良く纏められている。ベルト下の裾は、恐らく過去のMBならば間違いなく下半身と一体で抜いてきたような気がするのだけれど、今回は別パーツに。この割り方にドラゴンのGen2とそこからフィードバックを受けている昨今のGen1の影響を見るのは深読みにすぎるかしら。唯一の問題は、恐らくこの分割が(少なくとも今回は)クオリティの向上に貢献していない事かしら。

MASTER BOX "3563 Counterattack" -6

装備品群。ライフルのアモパウチは、ソヴィエトの”Y”型のパーツが正面に縫い付けられている物と、独の物と思しき"I"正面型の二種類が付属。アモパウチのサイズ的に、古いタミヤのキットのコピー品じゃないかしら。以前にも書いたような気がするけれども、MBの原型写真でも明かに他社のプラパーツを使っている写真があるし。最下段に写っているのはPPD-40用のドラムマガジン。以上にクリスピーなモールドから察するに、やっぱりこれもタミヤのコピーなんじゃないかなぁ。付属の銃器はPPD-34/38、PPD-40、そしてモシンナガン。全体的にヌルい。レジンがタミヤ/ドラゴンからのコンバート推奨だなぁ。
バイザーキャップは天辺の円盤で分割。赤軍らしいクラウンが平たい板状になっている独特の形状を再現する上ではベストかと。メットはM-36。頭頂部の飾りのキレは悪くない。バックパックは皺がちょっと固いかなぁ。

全体的に、MBのクオリティが少しづつ向上している事が見えるキット。箱絵の素晴しさは言うまでもなく、フィギュアも赤軍な素直な突撃ポーズとして実に良い味を出していると思う。ヘッドの素晴しさは本当に良い。このメーカーらしい癖はある物の、スラヴ人がスラヴ人として造形されている所には只々頭を下げるのみ。ホーネットのように西欧の白人がソ連のメットを被っているような、珍妙な雰囲気は全く無いね。ただ、昨今MBのクオリティが上がってきていると同時に、同社成形技術の低さが割と顕著に見えて来ているような気が。多分ZVEZDAのように新しい工作機械を導入できれば、化けると思うんだよなぁ。

じゃあ、今日はここまで。