[キットレビュー]ZVEZDA 3632 “GERMAN R-12 HEAVY MOTORCYCLE WITH RIDER AND OFFICER”

さて今回取り上げるのはロシアの老舗ズヴェズダのバイク+伝令&将校セット。数年前からズヴェズダはやたらとクオリティが上がっていて非常に嬉しい。割と供給も(海外メーカーとしては)安定してるしね。ちなみにこのセットに入っているバイクは以前発売された3607と同じ物で、要するに付属のフィギュアが違うだけです。たしかこ3607が発売された時はライオンロア辺りがバイクを発売して、それをマスターボックスが追い、何故かズヴェズダが参戦、なんていう訳のわからないバイク・リファインブームが来てた頃だった筈。

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パッケージ。箱絵は可も無く不可も無く。元の写真があって、それをPC上で彩色した感じ。背景でロシア風の街が燃えているのはロシアメーカーたるズヴェズダの面目躍如って感じなのかしら。ちなみにロシア/東欧メーカーには有りがちな事ではある物の、箱絵のポーズと実際のフィギュアのポーズには大きな差があるのは御愛嬌。

ZVEZDA “3632 GERMAN R-12 HEAVY MOTORCYCLE WITH RIDER AND OFFICER” -3バイクのモールドは恐しい程に繊細。かつての東欧キットのイメージはここに来て完全に払拭されたと言っても良いんじゃいかな。繊細なモールドに加え、成形自体も薄い所は薄く厚い部分は厚く仕上がっている。突き詰めればそれは模型としては当たり前の事なんだろうけれど、それをズヴェズダがやって来ている事は驚愕すべきなんじゃないだろうか。右の写真はZVEZDA “3632 GERMAN R-12 HEAVY MOTORCYCLE WITH RIDER AND OFFICER” -2エンジンのラジエーター部とタイヤのスポーク。ラジエーター部冷却用フィンの繊細さは割と感動できるレベル。バリも極僅か。昨今の流行に従ってタイヤも唐竹割りでトレッドパターンを再現。スポークも手前のように拘りの無い人間にはエッチングに替える必要を感じない細さ。こちらは若干バリがあるけれど、まぁ処理が難しいわけでは無さそうなので良し。とはいえ、ラジエーターにこんだけ繊細な彫刻しときながらフィンを真ん中で割るような分割する辺りはやはりズヴェズダらしいずぼらさ。これ合わせ目消すの面倒だろうなぁ。

ZVEZDA “3632 GERMAN R-12 HEAVY MOTORCYCLE WITH RIDER AND OFFICER” -6付属フィギュアのヘッドのクオリティも高い。原型師は誰なんだろう。少なくともТАНК/Miniart/ZVEZDA旧作の原型師や、MasteboxやICMのA.Gagarin氏では無い。癖が強い顔に分類されるかもしれないけども、口元や目元の彫刻なんかは凄く繊細。上は箱絵で立っている将校の物。この写真で見ると頬骨が強調されすぎているように見えZVEZDA “3632 GERMAN R-12 HEAVY MOTORCYCLE WITH RIDER AND OFFICER” -5るかもしれないけれども、実際の所はここまでキツくはない。下が彼の被っているピークドキャップ。どうもラインとしてはヒトラーが被っているタイプのキャップを参考にしているんじゃないかな。目庇上のチンストラップがクッキリ二つに別れている事、鉢巻上コカルデの彫刻のクリアーさ、そして何よりドラゴンですらトロけている事の多い国家鷲章の形の正確さに注目。恐しいまでの彫刻精度。正直ここまでパッキリした国家鷲章をインジェクションで見た事は無い。スゲェなこれ。

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ライダー側のヘッド。完全に人相が違うのは見事としか良いようが無い。勿論将校側のヘッドが非常に癖の強い形をしているせいもあるのだろうけれど、それにしてもここまで人相が違うのはやはり凄い事だと思う。頬から顎にかけてのラインがガッシリしたヘッドは1/35では少ないので、もし他にコンバートするにしても重宝しそう。眉がしっかりしかめっつらの形になっているのも鮮やか。難点は他のインジェクションフィギュアと同じく、ヘルメットからつながるチンストラップのモールドの不安定さ。やはりこれをスッパリ抜く為にはGen2みたいなアプローチを取らざるを得ないんだろうなぁ。塗装で誤魔化すか、マスキングテープか、或いはSKPの真鍮製の物に換装するか。いずれにせよ何がしかの方法は取らにゃあ駄目でしょう。

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ズボンの皺はこんな感じ。若干過剰な感じはする物の、股のボタンを締めた状態のラバライズドモーターコートを再現するとう意味では良いんじゃないかしら。ブーツの彫刻はハッキリしていながらそれらしい皺も入っていてマル。特筆すべきは、内股の部分にラバライズドコートの合わせのモールドが入っている所。多分バイクに乗せたら見えない部分ではあると思うんだけれども、そこをキッチリ再現してきている辺り、ズヴェズダのレベルは間違いなく上がっていると言えるだろうなぁ。組んでみないと何とも言えないけれども、若干胴回りが太いかもしれない。或いは平野義高氏原型のタミヤの35241みたいに、上半身を乗せたら何とも無い可能性もあるので明言は避ける。

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オートバイ伝令の胴体ブロック。特に問題無し。襟の薄さの表現は割と凄いと思う。実際に薄く見えるんだよね。それでいて彫刻がヌルいわけでもない。ただ一点、恐らく手前の買った箱だけだとは思うのだけれど、右肩の部分のプラがコゲてるような妙な状態で成形されております。プラがブラウンと黒になってるのさ。こういう所はやっぱりズヴェズダなんだな、と思い出させられる部分。あと一歩ツメが甘い感じというか何というか。

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個人的に感動したのは、この分割された手のパーツ。手先の節くれだった感じというか、大人の男の手の再現としては満点レベルなんじゃないかな。うっすらとはいえ、爪のモールドも見えるのはお見事。実は掌の側も、それぞれ指の関節がモールドされていたりと割と極上の出来。タミヤの伝令セットの憲兵の掌に匹敵する彫刻のクリアーさだと思う。

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伝令が背負っているKar98kもかなりパッキリクッキリしたモールド。形も悪くない上に、これが1ピースで成形されているのは凄いんじゃないかしら。用心金と引き金が完全に分離しているのはズヴェズダである事を考慮するともう単純にスゲェの一言。ただ、多分上で写真を載せた掌パーツの指の太さから考えると、用心金に指が入らないけれども。もう一点の問題としては、銃身下のクリーニングロッドが若干短かいような短かくないような。どうなんだろう。

全体として驚異的に出来の良いキット。バイクの彫刻の繊細さ、そしてフィギュアの出来のよさ、正直感動した。しかもそれがズヴェズダから発売されているという事実の面白さ。どうしたズヴェズダ。かなりオススメのセットです。

じゃあ、今日はここまで。