ホーネットの価値+フィギュアヘッド談義+The First Squad

何やら昨今のホーネットの新作(PMMS/魚拓)は顔が変わったね。なんというか、あの均整の取れたデフォルメからは大きく逸脱してしまった感じ。旧ホーネットの持っていた良さ、というのは、誇張を廃したわけでもなくかといってその誇張に拠りすぎたわけでもない所だったと思う次第で、コミックタッチの物が欲しいわけではないと思うのですよ。

これを見て思うのは、ホーネットはその役割を終えつつある、とまでは言わないまでも、その位置付けが多きく変化しつつあるのかな、という事。かつてのリプレイスメント用ヘッドのデファクトスタンダート、という地位から、沢山ある選択肢の一つ、或いはより下の「過去の遺物」というポジションへと。勿論雑誌では使われ続けるんだろうし、あのホーネットの膨大なラインナップの持つフレキシブルさ、という物は何ら輝きを失う事は無いんだろうけれど、それでもそれは「他に無いから」使うのであって、敢えてホーネットでなくてはいけない表情というのは飛び道具以外には無くなるんじゃないのかな、と思うんだよね。

それは例えばマスターボックス、ミニアート、ブロンコと言った新興メーカーの参入によるインジェクションフィギュア全体のレベルの向上であり、The BodiやMantis Miniaturesのような新興レジンメーカーの参入であり、そしてドラゴンやICM、タミヤ、そして何よりズヴェズダと言った旧来のメーカーの著しい進歩であり、と色々と理由はあると思うんだけど、かつてのように「ホーネットの方が激烈に出来が良い」って状況は酷く少なくなっていると思うんだ。

別にホーネットの出来の良さを否定するつもりはないし、それに挿げ替えるという行為それ自体をどうこう、って物ではない。アジテーションをするつもりもサラサラない。とはいえ、原点に戻って「何故ホーネットでなくてはいけないのか」っていう事を考えた時に、満足の行く答えが出なくなってるんじゃないか、とは思うんだよね。

例えばホーネットを使う理由が、恐らく殆どの場合においてそうであろう「キットのヘッドの出来がヌルい=出来の良いヘッドが欲しい」という物ならば、ホーネットのヘッドには使う理由がある。ではこのキットのヘッドの出来がヌルい、という前提条件が崩れた時に、果たしてそこには敢えてホーネットでなくてはいけない理由があるのだろうか、と言われると、まぁ、無いんだよね。例えば昨今のドラゴン/ICM/マスターボックス/ズヴェズダ/ミニアート, etcと言ったメーカーのヘッドは既にまぁ、十分に出来が良くなっているわけでさ。勿論使う理由が「ホーネットの造形が好きだから」と言うのなら、それは最早感情論であって否定する余地は無いけどね。

すると敢えてその前提条件たる出来のヌルいヘッドという物が加速度的に減っている現状で、且つ何故ホーネットが未だそのドミナントな立場を保ってるかと言えば、それが既にお作法になっているからに他ならないのではないかと思うのさ。即ちそれは日本の模型雑誌、特に一応の最大派閥たるAM誌が、事有る毎にホーネットに挿げ替えた事による、一種の刷り込みと、日本人の持つ右に習え精神の影響で、どうもホーネットに取り替えた、という一文を入れる事が一種のステータスになってしまったのではないかな、とか思うわけさ。

だからこそ敢えてもう一度冷静になって質問してみるのは重要ではないかと思うんだ。それがホーネットである必要があるのか、と。何故キットのヘッドでは、The Bodiでは、Танкでは、或いはその他のメーカーのリプレースメント用ヘッドではいけないのか、と。

模型に宗教はいらないし、お作法なんて物もいらない。これは声高に主張したい。カステンでアベールで油彩でパステル、そんな決まりきった方程式なんて物もいらない。アウトプットが良い物ならば、技法なんて物は全く関係ない。結果が、リザルトが良い物ならば、そこにはマナーなんて物もいらない。「何をしなくてはいけない」という押し付けはいらない。苦労をしなくてはいけない、なんて考えも不要。ジャンルなんて物に縛られるのは愚の骨頂。ガンプラの技法がスケールに活かされても良いし、美少女フィギュアの技法にヒストリカルフィギュアとの共通点を見出しても良い。スケールの技法がキャラモデルにフィードバックされる、多いに結構。

今一度スケールモデラーは自問自答しても良いんじゃないかな。今や一つのルーチンとなっている作業の一つ一つ、パーツ選定の一つ一つ、そして技法の一つ一つ。それが本当に必要なのか、もっと楽に出来る事はないのか。その試行錯誤を捨てて、無批判に過去のやり方を踏襲し、それから外れた物を批判する、そんな物はド阿呆のする事だよ。

閑話休題

さてそれはそうと先日ショッピングモール内のHMVにて「First Squad」というアニメ作品のブルーレイを購入しまして。ズーット前にYoutubeで見たMADか何かの元ネタと気付いた数分後にはレジに並んでおりました。

さてこのFirst Squad、日本製ロシアアニメという非常に特殊な代物だそうで。ストーリーラインとしてはまぁ、大祖国戦争中にナチが黒魔術やら何やらを使って昔の悪者のフォン・ヴォルフを呼び出すんでそれに対抗する為に超能力師団の最後の生き残りのナージャが戦う、っつう物で御座います。

絵は綺麗。当たり前ながら。単発作品として作られてるだけあって非常に綺麗。昨今のトレンドに従いメカあたりは完全にCG。でもそんなに浮いた感じはしないかな。

ザーっとロシア語の英語字幕で見た感じ、良いね。ロシア人の声優さんは頑張ってる。かなり良い。特に男の声が良いね。日本のように女性が演じる事が無い分、こう、良い意味での粗野な、低い感じというか。まぁ全員の声があってるとは良い難いのだけれど。日本とは良い意味で異質な感じがして好きだね。今度は日本語で見てみようと思う。

何如にもロシアだな、と思った描写としては赤軍の突撃シーンかな。士官が拳銃を掲げ、叫ぶ。「突撃!」全軍が塹壕から出て続く。そして防衛側のドイツ軍が引き付けてから撃ち始める。ここ。多分純粋に日本のアニメだったら、突撃シークエンスが始まった直後に突撃破砕射撃を始めちまうんじゃないかと思うんだな。

話が尻切れトンボ、というか続きが作れるようになっているのは、まぁ、お約束という事で。全体的には美味い事纏まってるんじゃないかな。敵のナチの双子は良いね。フィギュアが欲しい。何というかDUST的な造形と言うかな。

まぁ、是非買ってみると良いよ。ブルーレイだからリージョンの問題もなし、日本語音声、英語、ロシア語と三音声入っている事だし。

じゃあ、今日はここまで。