昨今デジタルカメラの技術発展著しく、日進月歩どころではない勢いで絶対的な性能が向上している事は間違いなく、最早記録媒体としてのフィルムは最早その役目を終えたと言える、銀塩の大いなる黄昏が今日である、と断言してしまったとしてもそう大きな間違いではないでしょう。(記憶の媒体としてはその「味」 – 例えそれが本来取られるべき補正手段を正しく行っていないが為であろうとしても – を愛好する人間は残るのは間違いないところであろうかと。 )
が、そんな黄昏時を、何故か妙にガンギまった顔で走る抜けているフィルムユーザー達は多々いる物で、即ちイメージセンサーに対してあまりに巨大なシートフィルムを操る大判カメラユーザー達は、今日も元気に最もプリミティブな暗箱を背に輝き続けているというか特殊なポジションを築き上げ、その固めた橋頭堡をまるでマサダであるが如くに守り続けていたり致します。
つまり、何が言いたいかというと、大判カメラ周り、まだ色々と新型ボディが販売されたりで死んでいないどころか、海外に目を向けてみると寧ろ10年前よりアクティブな雰囲気があり、そんな流れに乗ってカメラを一台入手しちまったぜ、という事なのです。
今回入手したカメラはハンガリー製の物で、VDSというメーカーのもの。ベースのフォーマットは5×7、一応縮小バックも注文したので4×5にも対応できます。使用レンズボードは□110、というか実測□109ぐらいです。寸法的にはトヨフィールドに近いんですが、多分トヨフィールドのボードは固定リブが干渉してとっつけられません。
このメーカー、今は公式サイトが無くFacebookのみ。しかもべらぼうに情報が少ないというメーカーで。どうも日本に数台程度は販売しているらしいのですが、いかんせん情報が無い。
じゃあなんでそんなん買ってるのよ、という事になると思うんですが、一番のポイントは軽量である事。5×7の公称重量が1.5kg程度。これはバルサ?みたいなのをメインに構築されているIntrepidに並ぶレベルの軽量さとなっており、タチハラの3.5kg、テヒニカの4.5kgと比べると軽量さが際だつでしょう。
フィールドカメラのクセに、というとアレですが、フロントはライズ/フォール/前後チルト (中心軸+フロントフレーム)/左右スイング/左右シフトとフルムーブメント。
リアもライズ/フォールは省略されている物の、前後チルト、左右シフト、左右スイングとかなりのもの。リアにシフトとスイングの両方がついている57フィールドカメラ、現行としてはほぼ唯一のモデルのようです。 (スイング単体ならStenopeika Afforable/Hyper/ディスコンではあるがTechnikaが装備している)
57というフォーマットだけあって蛇腹の最大展長は500mm程度。ただし構造上一本のレール上にフレームが乗っているので、あんまり伸ばすとアソビの関係でリアがちょい下がる雰囲気。300-450mmあたりまでが丁度良いレンジかと思います。
逆に最小(広角側)は150mm前後が通常では下限となりそうですが、その状態でもある程度のライズとフォールが可能な自由度には驚き。それより広角側を使用する場合はフロントのフレームを後ろに下げてやる事で仮想的に凹ボードを再現してやり、軸チルトでレンズボードを垂直に立ててやればGrandagon-N 115mmでも無限が出るのは確認済み。57フィールドカメラで115mmの無限が出る、これはかなり凄い事のように思います。
気になるお値段ですが、ボディ1100ユーロ、4×5変換バックが400ユーロ。送料が150ユーロぐらい。Intrepid等とはまた違ったアプローチで軽量化を目指しているVDSカメラ、選択肢としてはかなりアリなのではないかと。標準ラインナップは4×5-8×10、それ以上も対応してくれる様子。猶注文地にボディの木材(マホガニー/ウォルナット)/金具 (アルミ/ステン/真鍮?)、蛇腹の色(黒/バーガンディ)あたりが選べるので、お好み仕様にするのが宜しい物と思います。
今後5×7の活躍の機会が増えそうでハッピー。
じゃあ、今日はここまで。