薄型シートフィルムホルダー”MIDOフィルムホルダー”についての件

よほど特殊な場合を除いて大判カメラを担いだときに、どうしても必要になるのが三脚とレンズとボディーと何よりフイルムホルダーなわけで。もちろんデジタルバックが存在しないわけでは無いのですが、4 × 5インチ版あるいはそれ以上のデジタルバックがおよそ現実的ではない価格である以上、現在において大判を名乗るには、やはりフイルムが、フイルムホルダーが必要なのでありますが、このフイルムホルダーは両面に2枚入るとはいえでかくて重い。

これはフイルムフォルダの形式を問わず問題となることで、いざ多量の撮影をこなそうと思うとそれだけホルダーが必要になって即ち辛い。昔のプロのようにアシスタントを使ってなどということができるご身分ならばそんな事は問題では無いのでしょうが、いかんせん我らアマチュア我ら素人。自身の体力との戦いを常に強いられるわけであります。

で、もちろん世の中にはそこをなんとかしようとした人たちがおりまして、今は亡きクイックロードフォルダーであったり、あるいは古式ゆかしいとは言え実用的な部分が残っているメカニカルの塊グラフマチック、この辺で何とか保有枚数と重量、その釣り合いを取ろうとしてきた先人たちの戦いがあるわけです。

さて、ここに1つ、歴史の闇に消えていった製品がございまして、大判カメラが趣味の物としての正確を色濃くしつつある今日においてどれだけの方が興味を持つかは全くわかりませんが、とはいえ、いやあえてここで記録を残しておきたいと思うのです。

下の画像にあるMIDO Film Holderというのがそれで、 “Thin Cut Film Holder”の名前がある通り極端に薄型のフィルムホルダーです。どこかで日系アメリカ人が開発したと聞いたような? 通常のフィルムホルダーがプラスチックのフレームにフィルムを挿入するのに対して、Midoはフィルム自体の装填をペラペラの封筒に行い、それをスペーサー代わりのプラスチックの枠に嵌め込んで使用するというスタイル。

重量面ではフィルム10枚 (ホルダ5枚+MIDOフレーム)を持ち運ぶ前提でMido: 355g vs コンベンショナルなホルダ 986gとその差は歴然。つまり通常のホルダの重量を甘受するつもりがあるなら2.8倍弱のフィルムを持ち運べることになります。

なるほどフィルムホルダーという存在が大判カメラの運用に対して必ず必要となるアイテムであるというのであれば、それの軽量化をはかる事で総重量の圧倒的な軽量化を図るというのは全く道理でありましょう。体積的にも圧縮できるとなれば、これはもはや画期的とも言える程。各サイズが存在していたらしい所を鑑みるに、それなりに需要という物はった様子。

さて、ではそんな物が何故従来の、コンベンショナルなホルダーを駆逐するに至らなかったのか。サクっと実用してみた際に幾つか見える部分がございましたので、これも合わせて記載しておきましょう。

  1. 装填が面倒くさい – コンベンショナルなスタイルでないが故に、そして薄さを切り詰めているが故に装填が非常に面倒くさいというのが大きな欠点でしょう。フィルム自体を格納している封筒自体が二重構造になっており、コアと外の覆いという構成になっていますが、このコアがペラペラでかつ寸法がギリギリの為ダークバッグ内でフィルムを突っ込むのが非常に難しい。
  2. 管理が難しい – ペナペナのホルダ、コンベンショナルなホルダと比べて割に管理に気をつかいます。何らかのケースというか封筒みたいな物に突っ込まないとポロっと中が抜けてきそうでう。
  3. ネガやリバーサルを現像に出す時は結局コンベンショナルホルダに移動させる必要がある – あんまりに特殊な物なので、かつてシートフィルムがバンバカ使われていた時代ならまだしも今MIDOホルダーだけ出して後は宜しく、とはいかない物。結果として撮ったフィルムをまたホルダに写し替える等々して現像に出す必要があり、1の装填の面倒臭さ = 取り外しの面倒臭さとなってまた面倒再び。

なるほど薄く軽くした事による一長一短だなあ、などと思わざるを得ないわけです。とはいえ圧倒的な軽量化が図れるのは大きなメリットで、それにどこまでの価値を見出すかによって大きく評価の分かれるアイテムではないでしょうか。

じゃあ、今日はここまで。