前回投稿した日露戦争本と一緒に購入した一冊をレビュー。この本随分前から欲しかったのだけど、本屋にもアマゾンにも長らく在庫が無い為に買えなかった一冊であります。筆者はオスプレイのドイツ系を多数執筆しているGordon Williamson氏。当ブログで以前紹介したドイツ憲兵系の本二冊(Warrior 61/Men-At-Arms 434)も氏の手による物で、この213も加えて勝手に野戦憲兵三部作、とか思っております。そしてイラストはドラゴンの箱絵当でお馴染、我等がRonald Volstad氏。
The military policeman must be one of the lease appreciated (certainly by his fellow soldiers) yet most indispensable military figures in modern history. [本書P.3]
と、憲兵機構の重要さに対しての言及から始まる本書。ドイツ軍警察機構に含まれる組織郡であるFeldgendarmerieやFledjaeger等についての違いに言及している点はWarrior 61と同じだけど、一番ページを割いているのはやはりFeldgendarmerie des Heeres(陸軍野戦憲兵)で、次点がWaffen-SS Feldgendarmerie(武装親衛隊野戦憲兵)。説明している内容についてはいつものオスプレイで、編成や歴史、組織の構成等などなのでザックリ割愛。興味深いのは陸軍野戦憲兵の解説の項で、ある個人の戦歴を取り上げている事。あまりに超人すぎるので、とりあえずザックり訳してtwitterで呟いた物を多少修正してここにも記録しておく。
ハインツ・ハウアー国防軍野戦憲兵中尉 – 1918年生まれ 36年入営、38年に野戦憲兵に配属。ベルリン警察学校卒業後、秩序警察本部国外担当"z.b.V"に配属され、国防軍情報部"アプヴェーア"に所属。大戦の殆どの期間を特殊部隊"ブランデンブルグ"と過ごす。
1945 年にはベルリンにおいて、軍曹として小さなKampfgruppeを率いてベルリン防衛の任に当たる。クレブス将軍の命令により、45年4月16日から28人の兵を率いて侵攻してきた赤軍のベルリン内に存在する監視哨破壊任務に従事。
4月21日、赤軍監視哨を捜索していた所ばったり40両強の赤軍戦車部隊に遭遇。部隊の指揮所に夜襲をかけ赤軍の地図と書類を奪取。帰り道にさっきの部隊と抗戦しているドイツ軍の部隊に遭遇し、これに加勢。27両の戦車を破壊する。このうち13両がハウアー軍曹の戦果。この戦果は全てパンツァーファウストによる物。
帰投後クレブス将軍に戦果を報告し、それによりクレブス/ブルクドルフ/フェーゲラインの3名の立ち会いの元騎士鉄十字賞を与えらえれる。同時に野戦任官により中尉に昇進。その後、ヒトラーのメッセージをSSのシュタイナー将軍へと届ける特殊任務を言い渡されるが、バイクに乗って走っている所を赤軍の捕虜となる。ヒトラーからのメッセージは間一髪噛み砕き飲み込んでしまい、情報は漏らさなかった。
赤軍は即決裁判により死刑を宣告。一緒に捕虜になった数名と自分の墓穴を掘らされ、赤軍のルールに従い最後の煙草の一服を吸っていると、砲撃が丁度彼等の至近に着弾。赤軍兵が退避した所を見計らって、一緒にいた数人と逃走。
ドイツ降伏後再び赤軍の捕虜になり、シベリアのチェリヤビンスクに収容される。後にオムスの収容所へと移送されるが、ロシア人女医の助けによりベルリンへの帰還を果たす。
ベルリン帰還後再びGPUに逮捕される。しばらく監禁され、体重が50キロ程度まで落ちてしまう。しかし同情的だった赤軍士官の手により脱出し西ドイツへと到達。その後は新生独警察に奉職。叙勲は一級及び二級鉄十字章、銀色負傷章、東部戦線従軍章、二級剣付きWar Merit、金色運転技能章、戦車撃破章金2つ、銀3つ、騎士鉄十字章。
この本の見所は何といってもイラストと写真。とかく他の書籍で見掛けないような物が多く、特にハンガリー軍憲兵の国章をあしらったドイツ製ゴルゲットの写真だとか、イタリア義勇師団憲兵のファシスを掴んだ鷲のマーク付きゴルゲットのイラスト、海軍憲兵の(Pコートの上から着用する)ゴルゲットの写真もあれば、HG装甲師団の憲兵が陸軍のコートを着ている写真も載っていたりと、本当に変わった写真が多いような印象。写真が一部Warrior 61と重複しているのはしょうがないかな。
イラストも一級品で、24例の中には前述のハンガリー軍ありの、イタリア義勇師団ありの、アフリカ軍団/降下猟兵/武装親衛隊ありの、海軍ありの初期陸軍ありのと盛り沢山。クオリティもヴォルスタッド氏なので問題無し。
ちなみに確定とは言えない物の、過去にレビューしたWarrior 61、Men-At-Arms 434、そしてこの本に基いて考えると、どうも武装親衛隊憲兵の左袖にはアームバンドや腕章をつけている事こそあれ柏葉と国家鷲章からなる警察章は付いて無いのが正解のようです。
総評としては、野戦憲兵本として持っといて損の無い一冊だな、と。カバーしている範囲を軍←→警察のメーターで言うと、軍側によっているのがこのMen-At-Arms 213、警察側によっているのがMen-At-Arms 434、そして両者の中間とどちらもカバーしていない辺りに手を出しているのがWarrior 61かなと、そんな感じで御座います。とりあえずこの三冊は揃えて損しないんじゃないかなぁ。
★★★★☆(4)
じゃあ、今日はここまで。