Ospreyの屋台骨たるMen-At-Armsシリーズよりも、より深く特定のテーマを彫り下げるWarriorシリーズの一冊。著者はGordon Williamson氏、イラストはVelimir Vuksic氏。以前取り上げたMen-At-Arms434と比較すると、434がドイツ「警察」に焦点を当てていたのに対して、こちらはより軍属たる憲兵やSSの警備部隊に焦点を当てた物になっている。勿論通常の警察も取り扱っているけどね。
5部構成で、
- Wehrmacht Police and Security Troops [国防軍警察&警備部隊]
—Feldgendarimerie[野戦憲兵] /Feldjaeger /The Geheime Feldpolizei /Miscellaneous Security Units /The Sicherungs-Divisionen - The German Police [ドイツ警察]
—The Uniformed Police - SS and Security Police [親衛隊と治安警察]
—The RSHA(Reichssicherheitshaupamt) /The Einsatzgruppen /The Kriminal Polizei /The Geheime Staats Polizei/ Auxiliary Polie /The SS - Mountain Troops [山岳兵]
—13 Waffen-Gebirgs Division der Waffen-SS Handschar /24 Waffen-Gebirgs Division der SS Karstjaeger - Cavalry Units [騎馬部隊]
8 SS Kavallerie Division Florian Geyer /22 SS Kavallerie Division Maria Theresa /37 SS-Freiwilligen Kavallerie Division Luetzow / The Kaminski Brigade/ Sonderkommando Dirlewanger
興味深いのは、武装親衛隊の内部にあったクロアチア/ボスニアの回教師団であるハントシャール(ハンジャ)や、悪名高いカミンスキー旅団などの部隊がそっくり取り上げられている事。確かにこの辺りの部隊の活動は多分に治安維持活動的であったけども、普通は国防軍/武装親衛隊系という事で省かれるだろうと思う。この辺り、著者のSecurity and Police Soldierという括りが見えて来るように思える。加えて、国防軍も一般的な野戦憲兵だけでなく、あまり知られていない(と思う)Feldjaegerなんかについて触れているのも有り難い。
これらの憲兵や警備部隊がいかに徴兵されたのか、どのように行動していたのか、どのような編成をとっていたのか、という情報が一通りカバーされていて、一般的な歩兵とはまた違った警備部隊達の活動が見えてくるのは実に興味深い。例えば説明によれば、野戦憲兵やFeldjaegerと言った警備隊は一般の歩兵達から「安全な所にいて威張っている連中」と見られ嫌われていたそうだけども、実際には単独行動や2~3名程度の少数で行動する事が多い上に重要な情報を持っている事が多い為にパルチザンやレジスタンスのターゲットとなりやすく危険だったとか。
写真はMen-At-Arms 434との重複あり。全体的なクオリティは問題ない物の、SSもカバーしている関係か、処刑シーンなんかの写真もある為心理的に嫌な気分になる人がいるかも。ただ、警備部隊という特性上そういう写真があるのもしょうがないかなぁ。
イラストのクオリティは低め。ただ、スラヴ圏で徴兵されたらしい東方部隊の階級章のカラーイラストが掲載されている事と、野戦憲兵ゴルゲットが6種類結構な大きさで掲載されている事は儲け物かも。
全体的に、Men-At-Arms 434と比較するとWarriorシリーズだけあってより深い解説が多い。どちらが良い資料、という物ではなく、お互いに補完しあうような性質を持っているように思う。両方揃えると、大戦中にドイツの治安維持機構がどう動いていたのか少し見えてくるのではないかと。
★★★☆☆(3)
じゃあ、今日はここまで。